真冬でもなかなか雪は積もらない地域で暮らしてきたせいか、北国には憧れをもってきました。その景色の美しさはもちろん、厳しい自然と共生する人々の気質や彼らが生み出す芸術は、南国と比べて静寂ながらも、芯から熱をもつような力強い独特の魅力があります。
秋田に拠点をもつ新しい依頼主も、どこかそうした印象を受けるふたりです。福岡から羽田を経由し、およそ5時間かけて空港に降り立つと、到着ロビーで等身大のナマハゲと彼らが迎えてくれ、初夏の秋田を巡る数日間のフィールドワークが始まりました。
6月下旬の秋田は九州とそう変わらない気候で、当然憧れの雪景色を目にすることは叶いません。しかし道中の車内で、ふたりは少し前に越えた冬の様子や出来事をたくさん話してくれました。今見えている風景は一面モノクロームの世界になること。真冬の厳しさと、不思議な温もりについて。雪山を舞台にした狩猟や、奥深い自然の中での感覚。人々は冬を迎えるためにこの季節を過ごすようにさえ感じること。それらは車窓から眺める景色とは全くの異世界で、秋田の人々がそれほどのコントラストの中で暮らしを営んでいることに驚きます。こうした彼らの言葉をフィルターにして、雪深い冬を目の前に描きながら秋田での時間を過ごしました。振り返ると、夏という真逆の季節だからこそ、冬の本質について思いを馳せることができたのかもしれません。